ATR(Average True Range)とは?

ATR(アベレッジ・トゥルー・レンジ)とは、一定期間のローソク足の値幅を分析することで、価格変動の大きさ(ボラティリティ)を測定する指標のことです。ボラティリティの指標として、特定の動きがどこまで続くかを判断するためによく利用されています。 

ATRを日足で使う場合は、一般的に14日間の移動平均値を使います。チャートの時間軸を変える場合には、パラメーターもその時間軸に合ったものを設定することが重要です。 

ATRは、「真の値幅の平均」を意味します。そのため、真の値幅の一定期間の平均を線で結んだものがATRとしてチャート上に表示されます。そして、過去の変動率と比較し、通常より大きく変動しているのかを教えてくれます。 

短期のプロップトレーダーは、ATRを使って市場が今後も継続する可能性があるかを見極め建玉を注文し、決済してその日の取引を終えることがよくあります。また、長期的なトレーダーは、より長い時間枠で、いつ戻しや反発が起こりうるのかを見極めるためにATRを使う傾向があります。 

下の例では、ATRが上下するシグナルラインを示しており、この場合、最も低いバンドが0.0108レベルで、0.0318レベルが天井のレンジとなっていることがわかります。 

線がどのように上下しているかに注目してください。これがこのインジケーターの肝です。 

また、ATRセクションの左上には、0.0309という数値が表示されており、GBP/AUDペアの過去14本のローソク足の平均レンジが309pipsであることがわかります。 

この例では、1日あたり309pipsということになります。 

ローソク足とATRのチャート
 


ATRの使い方 

最も一般的な使い方は、ある取引セッション中に市場がどれだけ大きな動きをする可能性があるかを分析することです。 

例えば、先ほどのGBP/AUD のペアについて考えてみましょう。 

過去14日間の取引の平均レンジが309pipsだったという情報は、短期チャートで取引している人にとって重要となります。また、注文した後、さらに動き続ける可能性があるかどうかも重要になります。 

すでに290pipsも動いた上昇トレンドの中にいるとしたら、すべての条件が同じであれば、これ以上続く可能性は非常に低いと考えられます。 

もちろん、必ずしもそうであるとは限りませんが、短期トレーダーにとっては、その動きの中に留まるべきかを判断する方法の1つになります。 

一方、同じシナリオで、市場が45pips上昇したにもかかわらず、ATR値が309であったとします。このシナリオでは、短期トレーダーは通常、これをより大きな動きを見越して、取引を継続する機会だと捉えます。 

もちろん、トレーダーの中には取引には5分足のチャートを使い、ATRには1時間足チャートを使うという人もいるでしょう。また、上記の例のように、日足チャートを使ってこれを把握する人もいます。結局のところ、あなたの取引スタイルにかかっているのです。 

  • ATRはどこまで動くかの目安になります。 

  • ATRは極限状態でも変化しますし、常に変化する可能性があります。 

  • ATRはレンジの大きさを測るもので、必ずしも方向性を示すものではありません。 

取引を行った際にATRが非常に低いレベルだった場合、その取引機会はせいぜい短期的なものであり、利益も小さいものであることを示しています。 

多くの場合、トレーダーは複数のチャートをスキャンしてATRの測定値を確認し、測定値が大きいものを探します。なぜなら、それはより多くの可能性があることを意味し、うまくいけばより多くの利益が得られるためです。また、トレーダーの中には、ATRの値が上向きに拡大している場合、長期的な取引につながる可能性があると考える人もいます。 
 

EMAとATR  

他の多くの指標と同様に、ATRも単独で使用することができます。しかし、チャートで最も重要なのは価格であり、トレンドにも注意を払う必要があります。 

そこで登場するのがEMAで、これはトレンドを端的に表す指標です。 

下のチャートを見てみましょう。 

EMA・ATRチャートの例
 

20日EMAが数ヶ月前から下降していることに注目してください。市場は当初、このEMAをサポートラインとして使っていましたが、その後はむしろレジスタンスラインとなっていることがわかります。
 
また、ATRの測定値がここ数週間までは比較的低く、その後拡大していることにも注目してください。これは短期トレーダーにとって非常に重要な情報であり、彼らはこの日足チャートをNZD/CHFペアのデイトレードの、ちょっとしたガイドラインとして使うことになるでしょう。
 
短期トレーダーは、実際にボラティリティが確実に高まっているという全体的なトレンドに注意を払うことで、この市場が疲れの兆しを見せたときに売って、全体的な下降トレンドを利用することができるでしょう。
ここでは、売り方が主導権を握っていたということは明らかです。短期的に上昇することが何度かあったとしても、そうした短期的な上昇の後にはやはり売られています。
 
短期トレーダーは、全体的な下降トレンドに合わせて取引するだけでなく、セッションごとに市場が拡大し始めていることを認識していたことで、この市場の多くのチャンスを掴んだことでしょう。この例では、当初、市場は1日に約37pipsの動きでしたが、トレーダーが極端なボラティリティに気づき始めた頃には、その動きは1日平均107pipsにまで拡大していました。
 
短期チャートで取引する人にとって、1回のセッションで100pips以上のレンジがある場合は、取引が動く余地が十分にあるということになります。この意味で、ATRは特定の通貨ペアに十分なチャンスがあるかどうかを教えてくれる指標といえるでしょう。
 
例えば、ATR指標を使って市場がどれくらい動くかを判断しているトレーダーは、5分足のチャートで流れ星ローソク足を見つけるたびにショートするかもしれません。また、同じ短期チャート上で、大きくて、ちょうど切りの良い、心理的に重要な数字などを使うかもしれません。 ATR が上昇していればその取引を決済したり、そこにとどまったりしながら、取引の正しい側に立ち、ATR指標を使用しなかった場合よりも多くの利益を集めることができます。
 
また、 ATR は、逆指値(ストップロス)注文の設定にも利用されます。
 
例えば、 ATR が100pipsで、日足チャートで取引を行う人は、エントリーから100pipsのところに逆指値を設定することができます。これは、市場が100pips不利な方向に動くのだとすれば、ボラティリティの面で何かが確実に変化していることになり、自分にとって確実に不利な方向に動いているということが分かるためです。そのような場合には、その時点で市場から撤退すべきです。
 
また、自分のリスク許容度に応じて、100pipsのATRに合わせて建玉のサイズを調整することができます。言い換えれば、1回の取引で2%のリスクを許容している場合、取引の裏付けとしている100pipsが口座の2%を超えないように逆指値を設定すればよいのです。
 

注意すべき点

上記に示した通り、 ATRは価格がどちらの方向に向かっているかを示すものではなく、レンジと反対方向にどの程度動いているかを示すだけです。これは、その日の安値と高値の間のレンジであり、ローソク足の形状などは考慮されていません。
 
ATRは、多くのプロのトレーダーが使用している指標です。特殊な投資会社に所属していない限り、長期的に取引を保持するトレーダーはあまりいません。典型的なプロップトレーダーやデイトレーダーは、オーバーナイトでは建玉を保有しないため、寝ている間に心配する必要はありません。
 
その上、 ATRは1回のセッションで市場がどれだけ動くかを示してくれるので、朝取引を始める際に利用できます。
 
多くのトレーダーは、朝一番にチャートを見て、どの市場にチャンスがあるのかを把握します。トレーダーが利益を得るためには、ボラティリティが必要であることを忘れないでください。もちろん、ある種のレンジ相場を探している場合は別ですが、 ATRが非常に低い通貨ペアは、一般的にはあまり利益をもたらさないものです。
 
しかし、ほとんどのトレーダーはレンジ相場取引をしないため、一般的には ATRの数値が高いほど、そのペアは魅力的になります。とはいえ、危険性が高いことを示唆している場合もあります。リスクがあればリターンもあるということも覚えておいてください。
 
また、ATRを賢く使うために、逆指値設定のアイデアとして使用することが重要になります。
 
ATRは他のオシレーターとは異なり、ダイバージェンス取引という方法では必ずしも多くを提供せず、以下のようなその他の指標がスタンダードになっています。

  • MACD
  • ストキャスティック
  • CCI(コモディティ・チャネル・インデックス)

ここ数年、より長期的な ATRを使うことが効果的だと考えるトレーダーが現れ始めました。

 
一般的なものに20本ローソク足があります。デフォルトでは14本です。長期的なトレンドを扱うトレーダーの中には、日足チャートで50日といった長いタイムフレームを使用する人もいます。50日EMAは非常に一般的なので、日足チャートで50日EMAと組み合わせて50日ATRを表示することも多いです。
 
下のチャートでは、50日EMAが正しいトレンドにとどまる方法を示しています。またATRは、より大きな動きを期待して、短期取引をもう少し長く続けるべきかどうかを教えてくれます。ATRが、50日EMAと共にしばらくの間、比較的横ばいだったことに注目してください。50日EMAがロールオーバーし始めると、ATRは急速に上昇しており、これはもちろん取引のチャンスにつながります。

ATR-Indicator3.png

ATRは、テクニカル分析の中で必ずしも洗練されたアプローチというわけではありませんが、重大なトラブルを未然に防ぐために役立ちます。市場の動きを見逃してしまったら、新たな取引を開始してもあまり意味がありません。
 
また、機械による自動取引であるアルゴリズム取引は、短期的なセットアップを重視するため、ATRを多用する傾向があることも考慮すべきです。これによって、プロップショップや大規模な短期ファンドは正しい側にとどまることができるのです。